22 5月 2017 - 17:04
 黒部事業所にハラル食堂 外国籍の社員の環境整備

世界71カ国・地域で事業展開するファスナー大手のYKK(東京都)は今年4月、技術開発の「総本山」と位置づける黒部事業所(富山県黒部市)に、豚肉などを使わないイスラム教徒向けのハラル食堂を新設した。ハラル認証のお墨付きを得た社員食堂は全国的にも珍しい。同社は海外事業所の現地リーダー候補の育成に力を入れており、来日した外国籍社員が研修に打ち込めるよう環境を整えた。【鶴見泰寿】

徹底分離

 ムスリム(イスラム教徒)は、豚やアルコールなど宗教的に禁じられている食材や調味料に非常に敏感だ。ハラル食堂を担当した企画推進グループの中森絵理さん(27)は「食堂ができる前は不安で、白いご飯にしか手を付けなかった外国籍の社員もいた」という。

 そこで、400席入る社員食堂の厨房(ちゅうぼう)の一角(約30平方メートル)を昨年12月から約1カ月間で改修。中森さんは「ハラル食に関する食器、厨房、返却口と、食材の搬入から洗浄まで明確に分けることを徹底した」と胸を張る。

 国際的なホテルで20年以上働いたミャンマー国籍の男性シェフが、インドネシアやマレーシアの焼き飯「ナシゴレン」や焼きそば「ミーゴレン」など20以上のメニューを日替わりで作る。東南アジアやインドなどの社員から「甘みや辛みの味付けが母国に近い」と評判という。

1~3年の研修

 ハラル食堂を整備した背景には、YKKの経営戦略がある。主力のファスナーは経済発展が著しいアジアで需要が増えており、2020年度までに年間約130億本の販売目標を打ち出している。広報担当者は「外国で求められる製品は、その国の技術者でないと分からないことが多い。その国のファスナーを作れるリーダーが必要」という。

 そこで、2週間程度だった外国籍社員の研修を今年度から1~3年に延ばした。20年度までに、世界の事業所から計30人の受け入れを見込み、現在は10人が黒部事業所で学んでいる。

 中森さんは「食生活は基本。研修に打ち込める環境作りとして、ベジタリアンにも対応する食堂にした」と語る。

広がりを期待

 この食堂を3月にハラル認証した宗教法人「日本イスラーム文化センター」はこれまでに、上智大学の学生食堂や日本航空の機内食にもお墨付きを与えたが、「社員食堂への認証は今回が初めて」という。

 また、農林水産省や一般社団法人「ハラル・ジャパン協会」も、「ハラル認証のある社員食堂は前例がない。全国でも初めてではないか」と口をそろえる。

 パキスタン出身で日本イスラーム文化センター事務局長のクレイシ・ハールーンさん(51)は「これをきっかけに多くの企業でイスラムに対する理解が深まれば」と期待した。

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